連載第27回/キャビン内の暖房器具を考える
プレジャーボートのキャビン内部は、FRPなどのプラスチック系素材で製造されているものが多く、一般的に「夏は暑く、冬は寒い」といわれています。特に冬場のキャビンは、停泊中や釣行時に冷え込みやすく、快適に過ごすためには何らかの暖房対策が必要になります。
そこで多くのボートオーナーは、キャビン内を少しでも快適な空間にするために、さまざまな方法を検討します。しかし、マリン専用の本格的な暖房設備は設置費用が高く、配線や排気、燃料、安全対策も必要になるため、簡単に導入できないケースも少なくありません。
今回は、比較的簡単に実行できる「電気を使用したキャビン内の暖房器具」のアイデアを紹介します。12V電源、陸電、発電機、インバーターを利用する方法には、それぞれ特徴と注意点があります。
キャビン暖房に必要な電源の考え方
空気を暖める暖房器具には、必ず熱エネルギーが必要です。ボートで電気式の暖房器具を使う場合、その電源方法は大きく分けて次の3種類になります。
ひとつは、ボートのバッテリーから直接12V電源を利用する方法です。次に、マリーナの陸電やポータブル発電機から100V電源を得る方法があります。さらに、12Vバッテリーの直流電源をインバーターで100V交流電源に変換し、家庭用暖房器具を使う方法もあります。
12Vバッテリー電源を利用した暖房器具
12V仕様のポータブルセラミックヒーター
12V仕様のポータブルセラミックヒーターは、運転席のコックピットパネルにあるシガーソケット電源へプラグを差し込んで使用できる、手軽な暖房器具です。設置工事が不要で、必要な時だけ取り出して使える点が大きなメリットです。
暖房能力は家庭用ヒーターほど高くありませんが、顔や手元を暖める用途であれば十分に役立ちます。また、ウインドシールドに温風を向ければ、ガラスのくもり取りにも利用できます。
消費電力が比較的少ないため、エンジンを回している状態であれば、バッテリーへの負担も抑えやすい暖房方法です。ただし、エンジン停止中に長時間使用するとバッテリー上がりの原因になるため、使用時間には注意が必要です。
陸電または発電機を利用した暖房器具
家庭用セラミックヒーターや電気ストーブの活用
マリーナの陸電や発電機を利用できる場合は、家庭用の電気ストーブやセラミックヒーターなども使用できます。キャビン内で使う場合は、400Wから800W程度の小型セラミックヒーターが扱いやすく、短時間で局所的に暖を取る用途に向いています。
ただし、家庭用の大型暖房器具は、最低でも4.5畳程度以上の部屋を想定した暖房能力を持つものが多いため、狭いボートキャビン内では暖まり過ぎる場合があります。使用中は温度管理と換気に十分注意してください。
特に密閉性の高いキャビンでは、空気の入れ替えが不十分になると危険です。電気ヒーター自体は燃焼式ではありませんが、発電機を使用する場合は排気ガスの流入にも注意が必要です。発電機は必ず屋外で使用し、キャビン内や換気の悪い場所では使用しないでください。
発電機を使う場合は、暖房器具の消費電力に対して十分な発電能力があるか確認します。800W程度のガソリン式ポータブル発電機でも、小型の暖房器具であれば使用できる場合があります。
実用的な方法として、ポータブル発電機を桟橋に置き、そこから電源を取る使い方もあります。ボート本体に発電機を固定設置する必要がなく、燃料2リッター程度で数時間使えるモデルであれば、停泊中の簡易暖房として便利です。
また、ボートのバウやトランサムスペースに台座を置き、その上にポータブル発電機を設置する方法もあります。発電機の下にゴムやウレタンなどを敷くことで、振動の伝わりを抑えやすくなります。
インバーター電源を利用した暖房器具
12Vバッテリーを100V電源に変換する方法
インバーターは、ボートの12Vバッテリーから供給される直流電源を、家庭用機器で使われる100V交流電源に変換する装置です。陸電や発電機が使えない場所でも、バッテリー電源から家庭用の暖房器具を使用できるようになります。
この方法は便利ですが、陸電や発電機と違い、使用できる電力に限りがあります。暖房器具は消費電力が大きいため、インバーターを使う場合は、バッテリー容量、インバーター出力、配線容量、ヒューズやブレーカー容量を必ず確認する必要があります。
たとえば、12V・120Ahのバッテリーをエンジン停止状態で使用した場合、400Wの暖房器具は理論上約2時間程度使用できる計算になります。ただし、実際にはインバーターの変換ロスやバッテリーの劣化、放電深度の制限があるため、使用可能時間は短く見積もる必要があります。
エンジンをかけた状態で使用する場合でも、オルタネーターの充電能力が十分でなければ、長時間の使用は難しくなります。インバーター暖房は便利な反面、電力消費が大きいことが最大の弱点です。
キャビン暖房を安全に使うための注意点
ボートのキャビン内で暖房器具を使う場合は、暖房能力だけでなく、安全性を最優先に考える必要があります。狭い空間で使用するため、転倒、過熱、配線容量不足、バッテリー上がり、換気不足、発電機の排気ガスなどに注意してください。
電気ヒーターを使用する場合は、燃えやすいものを近くに置かないこと、就寝中に使用し続けないこと、濡れた床や結露の多い場所で使用しないことが重要です。また、発電機を使用する場合は、一酸化炭素中毒を防ぐため、排気がキャビン内へ流入しない位置に設置してください。
手軽な暖房対策としては、12Vポータブルヒーターで手元や視界周辺を暖める方法、停泊中に陸電や発電機で小型セラミックヒーターを使う方法、短時間だけインバーターを活用する方法が現実的です。ボートの使用環境と電源条件に合わせて、無理のない暖房方法を選ぶことが大切です。
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